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このページでは、僕が大好きな、あるいは影響を受けてきた音楽・本・映画などを紹介していきます。
音楽作品を紹介する際は、せっかくですので時々、自分で演奏した動画もアップしてみようかと思います。
文章を読んだあとに、実際の音楽もお楽しみください。

.001 Change the world / Tears in heaven ~Eric Clapton

2013-08-20

 RECOMMEND第1回目は、僕が音楽の道を志すきっかけになった曲をご紹介します。
初回ということでだいぶ長くなってしまいますが、よろしければどうぞお付き合いください。


 小さい頃から僕の家族は、父の仕事の関係で転勤・引越しが多く、国内をあちらこちら転々としていましたが、僕が中学2年の時にはアメリカに移り住み、オハイオ州のコロンバスという所で生活を始めました。

 その頃はまだそれほど音楽に興味はなく、まして人前で歌うなんて考えてもみないことでした。

 オハイオで両親に連れられて行った韓国料理のレストランに、お客さんが自由に歌えるカラオケと大きなステージがあって、お酒の入った父に「のぶひろもたまには歌でも歌ってみなよ」と言われ、当時流行っていた日本語の歌をガチガチになりながら殆ど無理やり歌わされたのが、人前で歌を披露した初めての経験です。


 アメリカでは現地校に通い、苦労しながらも楽しく充実した2年間を過ごし、日本の学校の事情でそろそろ自分だけ帰国する、そんな頃に友達が運転する車のラジオから流れてきた曲が、Eric Clapton 「Change the world」でした。

 確か当時ちょうど公開されていたJohn Travolta主演の『Phenomenon』という映画の主題歌として使われていたこの曲は、アメリカでもよく流れていましたし、日本でもヒットしていた記憶があります。

 それまで大して音楽に興味など持ったことのなかった僕の耳に、すぅっと心地よく自然に入ってきて、静かに染み渡るような感じでした。

 ちょうど緑のきれいな初夏の季節、自分が2年間過ごしたアメリカや、そこに住む友人達ともうすぐ離れなければいけない、そんなタイミングに聴いたこの曲は、僕の心に残ってずっと何日も離れませんでした。


 夏休みに入りいよいよ本帰国の日を迎え、コロンバス空港で家族や友人達と涙ながらにさよならを言い、シカゴを経由して乗った東京行きの飛行機の中、機内で上映していた映画リストの中に『Phenomenon』が!

 映画自体も心温まる良い作品でしたが、何より劇中に流れてきた「Change the world」に強く強く感動した僕は、日本に帰ってしばらく一人で住む予定になっていた小金井の寮へ向かう、空港からの道すがら、CDショップに飛び込みガラガラ荷物を引きずったままこの曲のシングル盤を買い求めたのでした。

 当時日本でも人気のあったこの曲のCDは、町の小さな店にもちゃんと置いてあって、今まで何かを買ってこんなに嬉しくなったことはないというくらいの喜びを感じながら、走りだすような勢いで寮へ向かったのを覚えています。

 部屋に着き、荷物を放り出して、シングル盤で3曲しか入っていないそのCDを何時間もむさぼるようにリピートして聴き、深く心を動かされた僕からは、アメリカを離れた寂しさはもうすでに跡形もなく吹き飛んでしまっていました。


 次の日、今度はクラプトンの他の作品も聴いてみたいと思った僕は早速街のレンタルショップに出かけていき、そこにあった彼のCDを片っ端から全部借りてきました。

 その中にあった1枚のCDが、「Change the world」と共に自分の人生を変えることになる作品、Eric Clapton 『Unplugged』です。

 静かで味わい深い、滋味に溢れたこの作品に入っている曲は、全てが良い曲ばかりですが、中でもクラプトンがまだ幼かった自分の子供を不慮の事故で亡くした際に書いた曲、「Tears in heaven」があまりに美しく感動的で、心を捉えて離しませんでした。

 とても悲しいのに、その悲しみを声高に叫ばず、あくまで穏やかに切々と歌う。どうしてこんなことが出来るんだろう…と考えた僕の中には、ある新しい感情・衝動が生まれていました。

 それは、この曲を歌いたい、どうしても歌うんだ、という思いでした。

 熱中しやすく思い込みが激しい僕はその数日後には新宿の楽器店に行き、一番安いアコースティックギターを買ってきます。日本で暮らす最初の時期の為に両親からもらっていた生活費を使って、ギターを買ってしまった僕は、それでも殆ど悪びれもせず、国際電話で「ゴメン!ギター買っちゃった!」と事後報告をして、両親を呆れさせた覚えがあります。


 それからの数日間、「Tears in heaven」を何度も、それこそ何百回も聴き、耳でコピーした拙いギターを弾きながらこの曲を歌った時に僕は、よし、これをやろう、これでやっていくんだ、ということを信じて疑いませんでした。

 それが可能か不可能か、なんてことはもう関係なくて、今これがなきゃ生きていけないんだからこれをやるんだ、という衝動的ではあるけれど、とても切実で、強い気持ち。

 この気持ちが今でも、音楽に限らず、自分が生きていこうとする上での原動力になっている気がします。

 それ以降の生活は劇的に変わり、音楽漬けの毎日を送るようになってもう15年近くが経ちましたが、今でもこの2曲に対する思い入れは強く、ライブでもよく演奏する、自分にとって特別な曲です。


 とても長い文章になってしまいましたが、僕が初めて弾き語りを覚えた曲、「Tears in heaven」の演奏とともに楽しんでいただければ幸いです。

 読んでくださって、ありがとうございました。